手結山の住宅Ⅲ

計画敷地は「手結山の週末住宅」の敷地の斜め前、造成されてから一度も建築されず自然に戻りつつある場所である。本来であれば目の前に海を臨むことができたはずのこの場所が、目の前には3階建ての別荘が立ち塞がっていた。しかしこの別荘を躱すように2箇所だけ海を観ることができるポイントを見つけ、ここでも風景を掴み取ることが可能な計画を目指した。

厳しい予算との調整の中で、4間x4間の平屋の正方形プランに辿り着く。大きな開口部からは豊かな自然と海の景色を眺めることのできるリビング・テラスを設えた。内部は軸組をそのまま現しとした構成とし「成り立ちの透明感」によって建築プロセスを明らかにした信頼感のある空間デザインを目指した。

敷地の余白部分は、少しずつクライアントが手を入れる庭として日々変化し続けている。非常に手入れの行き届いた「手結山の週末住宅」とはまた違った成長を見せてくれて、時折、前を通るのが楽しみになっている。