土佐山田の家
かつて私の母が3人家族のためにつくった住宅への増築である。母が設計した住宅で育った子が、新しい家族を持って再び私どもに住宅を依頼してくれたのは設計者冥利に尽きる。
建築はゆとりある敷地の良さをそのままに、東西に長い切妻屋根を持つ平屋という構成とし、玄関部分を大きな土間空間とした。
この土間空間は南北の建具を引き込むと「屋根のある外部空間」となり、開放的な中間領域の暮らしを楽しむことが可能となる。また、共働き世帯の抱える家事問題のひとつでもある洗濯物を干すことができるサンルームとしての機能も持たせ、トップライトからの光や無双窓からの風が通り抜ける生活の場としての空間ともなる。自然豊かな場所だからこそ実現したこの土間空間が、翻って町中の生活にも必要な空間としても解釈できたのは(結果論ではあるが)学ぶことの多い空間となった。
ここでも内部は軸組を現しとして東の端から西の端まで連続する空間とした。家族が東西の部屋に離れて暮らしていても、どことなく繋がっていると感じられる空間とすることで「ひとつ屋根の下に住まう家族」が直截に実現できたように思う。